三女から「永遠のゼロ、絶対観るべし」とメールが入ったのは、昨年末のことである。
催促されなくとも鑑賞しようと思っており、大みそかの午後、正月の準備も終わったので観てきた。
祖母の死後、実の祖父は特高に志願して戦死したことがわかり、孫の慶子と健太郎は祖父の戦友を訪ね祖父の軌跡をたどる。
宮部久蔵は天才パイロットであった反面、臆面もなく「生きて帰る」を口にし、無謀な作戦を「無理」と言ったがために、航空隊の仲間からは“航空隊きっての臆病者”とさげすまされていた。
しかし調査を進めるほど、別の祖父の評価が出てくる。
パイロットの教官である祖父は、仲間に命を大切にしろと悟し、訓練に失敗して墜落した練習兵をなじる上官に「そうではありません」と練習兵をかばったためにこっぴどく殴られる。
「死んでお国に尽くそう」「靖国で再会しよう」と潔く死んでいたとされるが、本音を語ることが許されなかった時代の象徴だと思う。
日本本土が空襲を受けるようになり、本土決戦に向けてボクの母は竹槍の訓練をやらされ、こんな状況になっても「日本は勝つ」と言わなければならなかった時代の史実である。
ともすれば退屈に感じてしまうドキュメンタリーっぽい取材が、作者の上手な展開でハラハラドキドキ、涙なしには観られない作品となっている。
ぜひ一度ご覧ください。
野遊人
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