ヒューマンエラーとは人為的過誤や失敗(ミス)のことで、「意図しない結果を生じる人間の行為」
透析治療を行う時、ダイアライザー(人工腎臓)に透析液を流すためのカプラーを接続し、総除水量、除水速度、抗凝固剤の注入速度などを設定して、運転スイッチを入れなければならない。
しかし“人間は過ちを犯す動物”と言われている通り、時として上記の作業を落としてしまうことがある。
それらを防ぐためにダブルチェックを行うのだが、それもスルーしてしまうことがある。
現在の透析装置は、スイッチの入れ忘れや入力忘れがあったとき、必ずOKモニター(日機装社製の装置)が働いて警告を発するようになっている。
また、一定の手筈を踏まないと次の工程に進めないように設計されている。
したがって現在の透析室では、スイッチ等の入れ忘れによるトラブルは皆無であるが、30年前の装置はヒューマンエラーを防止するよう設計することが技術的に無理であったため、どうしても人間の目視によるチェックに頼らざるを得ない。
しかし上述した通り人間の注意力には限界があり、ヒューマンエラーによるトラブルをゼロにすることはできない。
30年前はこんなトラブルがあったことを紹介しよう。
5時間の透析が終了し、終了操作を行おうと患者さんのところに行くと、あろうことか、ダイアライザーにカプラーが接続されていない。
つまり5時間もの間、血液回路内を血液が空回りしていただけで、透析も除水もされていないのだ。
この話をスタッフにしたところ「そういう場合はどうするのですか」と聞かれた。
このまま所定の透析を行うか、一旦帰宅していただき翌日透析をするかのどちらかで、中には激昂する患者さんがいるが、非はこちらにあるので、ひたすら謝るしかない。
今のスタッフには理解できない話だろうな。
野遊人