精神科医であり作家である加賀乙彦の自伝的小説、永遠の都(7部)と雲の都(5部)の長編を読んでおり、最終章の「雲の都 鎮魂の海」は、時期を同じくして20年前に発生した淡路・阪神大震災に差し掛かった。
震災発生当初の著者の感想は
「政府の動きは鈍く、村山首相は対策会議のみ重ねてなんら抜本的な対策を打ち出せないでいる。政治家としてなんと凡庸な人であろう」とある。
ボクもまったく同じ感想で、対策を打ち出せないでいる村山首相にTVのキャスターがインタビューし「何分初めてのことで・・・」の返答に、これが一国の総理の答かと驚愕した。
そんな政府の無策を尻目に現地では、各地から集まった若いボランティアが活躍していた。
当時65歳の著者はこの時ボランティアの精神科医として現地に赴き、若い精神科医では手に負えない患者の診察に当たっていた。
この時の状況を次のように記している。
日が暮れると、避難所を巡回診療していたボランティアの医師たちが帰ってきた。
みんな20代、30代の若い人たちだ。
東の鉄道が寸断されているために、西のほう九州、岡山あたりの人が多い。
その所属する医局では、一番診療に忙しい人たちだ。
そういう人たちが災害地に駆けつけているのに、暇なはずの60代の医師が一人もいないのに、悠太(加賀乙彦)は恥ずかしく思った。
「いまどきの若いもんは」と若者を馬鹿にしたように見下す60代が、いざという災害のときになにもしないのだ。
若いボランティアの活躍を見て、多くの日本人は若者たちの優しさとパワーを感じ取ったのではなかろうか。
野遊人
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