忘れもしない昭和60年1月1日、結婚して2度目の正月を家で過ごしていると、職場の上司から電話が入った。
自殺目的で睡眠薬を多量に服薬した人が、〇〇病院に緊急搬送されたから、治療に行ってくれ、必要な器材は業者に運ばせる、との指示が入った。
どのような治療を行うか説明しよう。
DHP(Direct Hemo Perfusion)直訳すると、血液直接潅流、活性炭が入ったカラムに、血液を直接通して、活性炭の吸着力を利用して薬剤を吸着する治療法。
図は旭メディカルのヘモソーバ。
患者さんは理髪店に嫁いだ20代後半から30代前半の女性。
既に胃洗浄が行われていて、医師に頼んで股静脈に脱血用の針を刺してもらい、腕の静脈に返血用の針を確保していただいた。
通常より抗凝固剤のヘパリンを多めに用いた治療を開始、血流の速度を200ml/mで行った。
3時間ごとに活性炭カラムを交換するので、治療をしている間に次に使用するカラムをプライミングしておく。
何本目のカラムを使用したであろうか、患者さんは覚醒して時折暴れ出すが、医師やスタッフがなだめて落ち着かせる。
患者さんが覚醒したことでボクは一安心、何故なら薬物が体内から除去されたことを物語っているからだ。
医師からもういいでしょうと言われ、治療が終わったのは深夜だったので、カラムは5,6本使用したと思う。
自殺の目的はわからないが、年末に睡眠薬を2本購入して、年が明けた頃服用した模様で、正月を待って決行したことは、強い思いがあるように感じた。
一命を救えた安堵感で、気持ちよく帰宅することができた。
野遊人
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新入りの頃、独りでメーカーさんに教えられるがままに
必死でやってた記憶があります(恐)
最近はあまりこういう治療、減ってるような?
(ワタシが出会ってないだけかもしれませんが)