戦前の日本はゼロ戦を初め、隼、紫電改などの名機を生み出す航空機技術が高い国であったが、戦後7年間、連合国から飛行機の製造・開発が禁止されたためか、自動車の製造技術は世界的にトップであるにもかかわらず、飛行機の製造は見るべきものはない。
東京大学航空学科を卒業した藤野は、25歳の若さでジェットエンジンの開発を命じられ、アメリカに渡り開発を続けてきた。
主翼上部にエンジンを置いたホンダジェットは、航空専門家からは失笑をかったが、最高速度、航続距離はどの小型ジェット機よりも高く、燃費は17%も上回るものであった。
胴体後部にエンジンを設置した既存の小型ジェット機は、キャビンが狭く、エンジン音や振動が高く、顧客の不満は高かった。
それを知っている藤野は、社長に製造、販売を直訴。
製造工場を作り、修理工場と販売拠点を世界に配置しなければならず、巨額の投資を必要とする巨大プロジェクトに経営陣は二の足を踏むが、藤野の熱意と納得するに十分なプレゼンテーションにGOサインをだす。
この本は、ホンダという会社のチャレンジスピリットとともに、藤野という人物が成し遂げた新規事業のサクセスストーリー、そして藤野のリーダーシップ論を感じ取ることができる素晴らしい本である。
なお、著者の前間孝則は、石川島播磨重工業で20年ジェットエンジンの設計に従事した人で、航空機に関する著書をいくつか上梓していて、その中の「飛翔への挑戦」を今ボクは読んでいるところだ。
野遊人
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