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2024/05/04 19:09 |
透析昔話 その25 犯人はギア比の違い

個人用透析装置DBB22を液置換に入れたが、一向に透析液の濃度が上昇しない。

バルブの故障をまず疑い、透析原液のボトルに差し込まれている原液注入ラインを持ち上げて空気を入れ、空気が吸引されるか観察するが、空気は吸引されない。


装置のサイドパネルを開けて原液吸引ポンプを見ると、ポンプのプランジャーが作動していない。


図は現在の原液注入ポンプで、当時の原液注入ポンプは、パルスモーターとカムの間にギアボックスがあった。


  

当時のパルスモーターはトルクが十分ではなかったので、それを補うために回転数の高いモーターを用いてギアで減速していた。


原液吸引ポンプのモーターを取り外してみると、モーターは作動する。


そうするとギアボックスが原因であるから、ギアボックスを交換した。


しかし透析液を吸引するものの、設定の濃度まで上昇しない。


透析原液の逆流もないからバルブの不良は考えられない。


エエ~!どうして、組み立てる時何か間違ったことをしたのかと、何度も手順を反芻するが原因は思い当たらない。


メーカーに問い合わせれば答えはわかるだろうが、意地でも自分で原因を見出したい。


退勤時間になったので帰宅するが、頭の中は何故だ?何故だ?酒を飲んでいても何故だ?何故だ?


ふとんに入る直前、ひょっとして除水ポンプと原液吸引ポンプのギアボックスのギア比が違うのでは、と頭にひらめいた(除水ポンプと原液吸引ポンプのモーターは同じだが、プランジャーの太さが違っている)。


ひらめきは当たっていて、翌朝ギアボックスを交換すると設定した透析液濃度に達した。


※原液吸引ポンプのギア比は1:3、除水ポンプは1:5)


原因が解消された嬉しさより、どっと疲れが出た。

 

野遊人

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2016/02/20 11:11 | Comments(0) | 臨床工学技士
透析昔話 その24 配管内の水苔

ボクが現在の透析医療に従事した頃の透析用の希釈水は、軟水装置のみで処理したものを殆どの施設が採用していた。

それから1、2年後、診療報酬に逆浸透装置加算が記載され、逆浸透装置で作製された希釈水を用いると、1回の透析に30点請求できるようになった。

これは、逆浸透装置を普及させるために設けた措置である。

軟水装置で処理した水=軟水は、CaMgなどのミネラル分を除去し、水道水に含まれる消毒用の塩素も取り除かれる。

塩素が除去されるため、希釈水を送る配管内は、緑色の水苔が貼りついていたのが実態であった。

しかし現在は、透析液を直接体内に注入するオンラインHDFに用いる透析用の希釈水は、注射用水の水質レベルを要求され、細菌の内毒素であるエンドトキヂンは測定限界以下で、ほぼ無菌である。

現在の水準からすれば考えられない時代であったのを、若い臨床工学技士の方は理解できるであろうか。

30年以上透析を受けている患者さんは、そんな時代の透析を乗り越えて現在に至っていることを理解していただきたい。
 

野遊人

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2016/02/19 10:53 | Comments(0) | 臨床工学技士
透析昔話 その23 シャントの再循環

血液透析は1分間に150300mlの血液を、ダイアライザーに流さねばならず、そのためには通常手首付近で、動脈の血管と静脈の血管をつなぎ合わせる「シャント」の手術をする。



図のように、脱血側から血液を取り出してダイアライザーで浄化した後、返血側へ血液を返す。

静脈圧が高くなり、透析液圧は下限警報を発令したので、生理食塩水を血液回路内に補液すると、静脈圧は下がり透析液圧は通常に戻った。

それを2回行ったと、同僚の臨床工学技士から報告があった。

「ウウン、これは何かありそう」と透析室に行き観察すると、動脈血なのに静脈血のように黒い。静脈圧は徐々に上昇し、逆に透析液圧は徐々に下がっていく。

シャントの再循環だ。

ダイアライザーで浄化、除水されて返ってきた血液が再び脱血側に戻り、ダイアライザーを通過することにより、血液が濃縮された状態をいう。


返血側の静脈の血管に狭窄が生じたためにおきた現象。

看護師に、返血できる血管を探して刺し直してと言うと、「この血管で再循環が起きるわけないでしょう」とすごい剣幕で返された。

ボクはシャント血管のことはわからないけど、この状態は再循環に間違いないし、カリウムの検査をすれば一目瞭然だけど、検査しましょうかと、ボクが自信満々に応えたため、渋々返血の血管を探して穿刺してくれた。

結果は、血液は鮮血色に戻り、透析終了まで警報が発令することはなかった。

同僚の技士は、警報が発令して、おそらく血液が凝固したのではないかと考え、生食を注入してリンスしてみたが、静脈圧は下がり透析液圧は通常に戻ったので良しとしたのでしょう。

しかし何故、血液が黒く、静脈圧は上昇し透析液圧は下がるのか考えておらず、しかも2度も同じ現象が起きているのに、疑問にも思わない姿勢に、技士としてやっていけるのかなと心配になった。

 

野遊人

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2016/02/17 06:31 | Comments(0) | 臨床工学技士
透析昔話 その22 担当者を悩ませたトラブル

日機装のTサービスマンから「〇〇公立病院にいるが、取りに行くから減圧弁を貸していただけないか」と電話があった。

その病院の透析スタッフに顔を売っておきたいので、ボクが届けることにした。

減圧弁の不良とは珍しいねと、言いながら装置を覗いてみると、本来なら複式ポンプの動きに合わせて、1040KPaの間を動く給水圧の圧力計が、40KPaから上限の間を動いている。


明らかに変。


  


※図は0~0.4MPaになっている。

減圧弁は装置の背面下についており、早速交換して運転に入れても、現象は解決しない。

エ!エ!エ!エ! 経験したことがない現象に、二人して頭を抱えてしまった。

Tさん、ひょっとして複式ポンプのポペットバルブではない?(絶対的な確信があったわけではない)と提案する。

ポペットバルブを外してみると、なんと、給液側入口のバルブにビニール片が挟まっていた。


往復運動する複式ポンプが、一旦吸いこんだ透析液が、バルブに大きな漏れがあったため逆流を起こしていたため、給水圧力計が見たことがない動きをしていたのだ。

これにて一件落着だが、何でビニール片が挟まったのか、装置を分解した時に入ったとしか思えない。

でも最近分解したことはないので、どこかにビニール片が引っかかっていて、何かの調子で取れたのが原因ではなかろうか。

Tさんは病院のスタッフに、「野遊人さんが原因を見つけてくれました」と、ボクを持ち上げてくれた。

感謝、感謝

 

野遊人

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2016/02/15 06:28 | Comments(0) | 臨床工学技士
透析昔話 その21 受水槽が空

豊橋メイツクリニックが開院したのは平成8年で、透析ベッド44床で開院した。

1年待たないうちに60床に増床し、開院から3年後には79床に、最終的には99床まで増床し、平成24年、新築移転して150床までになった。

本日の話は平成20年、透析ベッド90床の時のこと。

10時頃、豊橋メイツのM部長から電話が入った(当時ボクは豊川メイツの部長を務めていた)

15tの受水槽が空になり(渇水警報を発令)、水道設備会社の担当者に電話したけど飲酒していていけないと言われた、野遊人さんも飲んでいますよねと、ボクを気遣いながらの電話であった。

皆目見当がつかないので、次女に頼んでクリニックまで送らせた。

受水槽が空であるのは間違いないが、断水しているわけではない???。

当時3台の逆浸透装置があり、本来停止しているはずの1台が稼働していて、精製水を作り放しの状態になっていた。

でも水道水は受水槽に供給されているのに何故空になるのか???。


ない知恵をフル動員すると、開院当初44床で出発したので、水道の給水管は25mmを設置したが、その後増床を繰り返しても、給水管はそのままであることに気づいた。

つまり、25mmの給水管では供給不足ということ。

翌日給水管25mmから40mmに変更する起案書を急いで作成して提出した。

給水管を太くしたので、水道局に支払う過入金の差額714,000円を含む総額180万円の工事代金となった。

なお、“暴走”した逆浸透装置は、電源のON,OFF後、何事もなかったかのごとく正常に稼働した。

野遊人

 

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2016/02/12 07:34 | Comments(0) | 臨床工学技士

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