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2024/05/18 14:51 |
透析昔話 その20 不測の事態に備えて

20年ほど前、東三河にある透析施設でのこと。

9月の祭日に、その施設の隣家で火事が発生し、近隣が停電になった。

停電になれば当然透析装置は停止する。

透析施設のスタッフは、透析監視装置内蔵のバッテリィを用いて、電池運転に切り替えて血液ポンプを作動しようとするが、普段、電池運転のトレーニングをしていないので要領を得ない上、充電できていない電池もあり、血液ポンプに手回しハンドルをつけて、手で回さねばならない装置がいくつかあった。

スタッフの人数は限られるので、患者さん自身が手で回したもらったものの、どの位のスピードで回してよいのかわからず、透析室は大混乱した。

そういうお前の施設は大丈夫かと、質問が来そうですが。

透析監視装置は6年経過した時点でバッテリィは新品に交換し、透析室では毎月、コンセントからプラグを抜いて停電状態にして、内蔵バッテリィを用いた返血訓練を行っている。

返血訓練は手技を習得するだけでなく、内蔵バッテリィの充電状態を確認することができる。

野遊人

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2016/02/11 11:33 | Comments(0) | 臨床工学技士
透析昔話 その19 逆浸透装置が止まる

午後3時出勤の夜勤の日、昼食を終えて休息していると、職場のT技士から電話が入った。


逆浸透装置が停止して、DABが警報を発令しています、とあわてた様子で事の次第を伝えてきた。


これだけでは原因が皆目分からないので、逆浸透装置はどんな警報を発令しているのか問うと、分かりませんが、エレベーターも止まっていると言う。


これでピンときた。


電灯はついているので停電ではないが、逆浸透装置とエレベーターが停止しているので、200Vの供給が停止したと判断し、クリニックの建築工事を請け負った電気工事店に電話して、至急来院するよう指示した。


さらに透析監視装置の信号ケーブルを、透析工程切替コネクターに差し換えてECUMを行うよう指示を出した。


昨日のブログで報告したように、手製の工程切替器がここで役に立った。

急いで出勤すると、電気工事の担当者も来院してキュービクル(変電所から送られてくる6,600Vの電気を100V200Vに変圧)を点検する。


昨日取り替えた200Vのヒューズが切れたのが原因と判明、どうも不良品のようだった。


T
技士には、逆浸透装置とエレベーターが同時に故障することなど殆どありえない。


逆浸透装置とエレベーターで共通するものは200Vの電気だけ、そのように考えればおのずと答えが出てくると諭した。


ECUM
に切り替えて除水が完了している患者さんの一部は治療を終えたが、多くの患者さんは不足分の透析を行って治療を終えた。


野遊人

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2016/02/09 06:44 | Comments(0) | 臨床工学技士
透析昔話 その18 工程切り替え器の作製

多人数用透析液供給装置のDABと透析用監視装置のDCSは、12芯のケーブルで接続していて、DABからの指令はこのケーブルを通じて行われる。

DABが警報を発令すると、ケーブルを通じて「停止」の信号が送られて、透析用監視装置は停止する。

平成元年、1階の透析室に22台、2階と3階には各18台、計58台の透析用監視装置があった。

精製水を作製する逆浸透装置は1台で、3台のDABに精製水を供給していた。

逆浸透装置が故障して、精製水を送水できなくなると、DABは「給水圧低下警報」を発令して停止し、58台の透析用監視装置も停止してしまう、つまり透析治療ができなくなる。

当時の装置は、透析液を必要としないECUM(除水のみ行う)に切り替えることができない設計になっていた。

透析監視装置のケーブルを外して工程切替器を接続すれば、透析監視装置を単独で作動させることができるが、工程切替器は1台数万円したので、58台分を購入するのは躊躇した。

DABからの信号は12芯のONOFFであるから、12本のケーブルのいずれかを短絡させれば、単独で水洗や液置換、透析の工程にすることができるのではと考え、メーカーに相談するとピンポンの答えが返ってきた。

工程の切り替えは透析工程のみ必要で、DABが故障して復旧に時間を要する時、ケーブルを外してDABからの警報の信号を切り、単独で透析工程にするコネクターを取り付ければ、ECUMはできることになった。

備えあれば憂いなし、これが役に立つときがやってきたのは、明日の心だ~。

因みに、DABが警報を発令していても、DCS26は単独運転に設定変更すればECUMが可能になり、さらにDCS27からは設定変更しなくてもECUMがおこなえるようになった。

野遊人

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2016/02/08 09:11 | Comments(0) | 臨床工学技士
透析昔話 その17 透析装置の構造的な欠陥を発見

ボクが就職したクリニック豊橋は、開院した昭和56年当初は、ガンブロ社のAK-10を使用していたが、日機装社からバイカーボ透析が可能で、除水コントローラがついたDBB22が発売され、バイカーボ透析と除水コントローラの優位性は非常に高く、昭和623年にはAK-10は(勿体ないけど)廃棄し、透析装置はDBB22DCS22、それにニプロ社製のNCD11になった。


日機装の透析装置の除水方式は、除水ポンプで設定分の除水を行う容量制御方式で、ニプロの装置は、設定された除水速度に対して必要な圧力、TMPをかけて行うTMP制御であった。


ニプロのTMP制御方式をもう少し詳しく説明すると


透析開始直後、15分後、30分後、1時間後、後は1時間ごとに、100mmHg200mmHgだったかな?)のTMPをかけてECUMを行い、装置内のシリンダーが一定量になる時間を計測して、使用しているダイアライザーのUFR(限外濾過率)を検出するもの。


除水速度とUFRから、除水速度÷UFRTMPが設定される。


透析の経過とともにダイアライザーの膜は目詰まりを起こすのでUFRは低下するが、UFRを測定するたびに膜の目詰まり分を補正してTMPをかけるので、除水は正確に行われる。


若い男性患者に旭メディカル製のPAN(ポリアクリニトリール)膜を使用することになったが、透析を終えて体重計の乗ると1kgほど過除水になっていた。


おそらく測定ミス(透析前、荷物を持って体重計測した等)だろうと判断して、次回の透析もPAN膜を使用したところ、同じ状況になった。


これは何かあるが、メーカーに連絡しても「そんなはずはない」と取り合わない。


以来どうしてだろうと、ボクの頭はこのことから離れずにいたが、UFRの高い膜のUFRは、直線ではなく放物線を描くことに気づいた。


ところがNCD11はUFRを直線としてTMPを算出しているので、UERが高くなるほど誤差が生じることに気づいた。


図で説明しよう。




100mmHg
TMPをかけてECUMを行ってUFRを測定し、必要なTMPが40mmHgだとすると、UFRの高い膜のUFRは放物線を描くため、必要以上の除水(緑色の矢印)=誤差が生じる。


早速設計者を呼んで説明し、当初、ボクの報告に耳を貸さなかった設計者は、グーの音も出さずに戻り、後日UFRを測定する回数を増やしたプログラムを持参したが、透析量(当時は透析効率と呼んでいた)が落ちるようなプログラムは容認できないと指摘した。

これを契機にニプロは、容量制御のNCU-10の開発に入った。

 誰も気づかないNCD11の問題点を究明した野遊人、遊んでばかりではないことが分かっていただけたかな。
 
野遊人

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2016/02/05 06:44 | Comments(0) | 臨床工学技士
透析昔話 その16 同じ病の若い女性患者の一言が

昭和601月半ば午後7時のこと、市内の開業医の紹介状を持って、両親に付き添われて、中学3年生の少女が受診に訪れた。

 

三木院長が透析の必要性、そのためにはシャントの手術をしなければならないことを説明するが女の子は「イヤ、絶対にイヤ」を繰り返すばかり。

 

院長の奥さんが、患者会の旅行のアルバムを見せて、「生活の制限はあっても普通の暮らしができるよ」と言っても、かたくなに拒否する。

 

夜間透析が終わり、透析室のスタッフはいつでも透析ができるように待機している。

 

夜中の11時、ラチが明かないので、17日に透析導入したばかりの23歳の女性の患者さんに説得を依頼したところ、「透析をやらなきゃダメ!」の一言で彼女は透析の導入を納得した。

 

すぐに外シャント(これも絶滅危惧種になるな~)を作製して、無事透析を終えた。

 

翌日、院長が紹介先の医師に、電話で無事透析を終えたことを伝えると、「よく説得できましたね」と感心された。

 

説得した患者さんは、今でも元気に透析治療に通院している。

 

一方の少女は、名古屋市の高校入学に伴い名古屋市の透析施設に転院し、その後腎移植をしたと風の便りに聞いた。

 

今でも元気に暮らしているだろうか。

 

野遊人

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2016/02/03 05:21 | Comments(0) | 臨床工学技士

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